2012年10月31日水曜日

生を養ふ道は、元気を保つを本とす


元気でいるためには、それを害する者を取り除く必要があります。これまでも出てきている、外邪を防ぎと内欲を制御するということですね。その辺りがそこそこできていれば、元気を養うために飲食や立ち居振る舞いに注意することになります。

 植物を育てるときなども、生育を妨げる雑草や害虫など害するものから防いだ上で、水や肥料をやります。養生の道も同様です。

 気を損なうようなことを少なくして、気を養うようなことを多くするというのが、養生する上で大切なこと。

 日々の暮らしの中で、以上の注意をすこしでも心がけていれば、生活習慣病などにも取り付かれにくくなるでしょうね。

およそ人の身は、よはくもろくして



 人の体というものは、弱く脆いもので、その儚さは風前の灯が消えてしまうのと同様といえる。そんな脆弱な体を傷めるものは、身の外にも内にもある。

 外敵は、風、寒、暑、湿などなどがある。自分の体を過信して、これらの外邪に身を任せていてはいけない。

 内敵は、飲食欲、好色の欲、だらだら眠りたいという欲、怒り、悲しみ、憂いなど内から起こるものである。これらは内から身を破ることになりかねない。

そして、これら内にある敵をコントロールできなければ、外敵を引き込むことにもなるのである。

 どんなに、身体が強く生まれついた人でも、内外の敵に好き勝手させていたのでは、長生きはできないでしょう。外敵に対しては、早め早めに用心をし、内敵に対しては、欲を抑え、感情のコントロールを行うように、心を強くする必要がある。

 そうそううまくはいかないでしょうが、このような心構えは、機会在るごとに思い出したいものですね。

2012年10月30日火曜日

長生すれば、楽多く益多し



 若い頃読んだ書物を、ある程度の年齢で再読すると、その印象が大きく変わることがあります。書物の内容が変わるわけはなく、当然読む側変わって来たわけですね。年齢とともに見える風景が変わるということです
 50歳に到達するまでは、心が定まらず、生きる知恵も開けない。古今の出来事を知らず、世の中の変化に対応できない。発する言葉もいろいろと間違いが多く、後悔するような行いをちょいちょいしでかす。人生の理や楽しみを知らないまま50歳に至らずあの世へ旅立つのは短命というべきだろう。
 長生きすれば、楽しみを経験し、有益なことを知ることができる。日々新たなる知識を得るし、これまでできなかったことができるようになったりする。このようなことは長生きしなければ得がたいことである。50歳を越え、できれば60歳という年齢にもぜひ達したいものである。
 気が荒れるままにし、欲の赴くままに行動し、こらえ性がなく、慎みというものを知らない人というのは、なかなか長生きというのが難しいようだ。

 益軒の言葉を聞けば、なるほどと思いますが、己の精神や感情をコントロールできれば、悟りに近づいているということかもしれないですね。

2012年10月29日月曜日

上寿は百歳、中寿は八十、下寿は六十なり。


 60歳以上は長生きです。世の中には、50歳以下で亡くなられる短命ななも少なからずおられます。その中には、先天的な病気で夭逝する方もおられるでしょうが、養生が不十分で短命となる人も多いでしょう。

 もともと人の体は大事に使えば100年くらいもつようにできているようです。だから60歳くらい生きれば長生きとは言っても、まだまだ下。80歳くらいまで生きれば中。100歳まで生きれば上出来といったところ。

 長生きが人生の目標ではないにしろ、長生きするほどに多くのことを経験し、人生を味わうという醍醐味を知ることができるのかもしれません。身体をいたわり、動く体で長生きしたいものです。

2012年10月28日日曜日

日々少づつ労動すべし



 ダラダラした生活が習いとなると、体を動かすのが次第に億劫になるものです。人という動物も、動いていなければスムーズに動けなくなるのは機械などと同じです。

体を動かさないでじっとしていると、体液や気のめぐりが悪くなり、体にとってはよくないようです。何かが滞る、というのよろしくないのです。

毎日少しずつこまめに体を動かすような仕事をし、ずっと座りっぱなしや睡眠の摂り過ぎなどを避けたほうが良いようです。また食事の後にはゆっくりその辺を歩くようにし、体を動かしていると、体をめぐる様々なものの滞りがなくなる。すると特に治療などしなくても、多くの病は遠のいていくものです。

体がだるいなどといって、体を動かさず休息を取ろうとする方がおられますが、疲労物質などは循環が良くなければ洗い流されません。

あなたはどうですか。休息と称して体を動かさない時間を多く取りすぎていませんか。

凡(およそ)薬と鍼灸を用るは、やむ事を得ざる下策

 ちょっと調子が悪くなると薬を飲む。調子が良くても何か飲むという人がいますが、それは上策とはいえません。特に西洋薬の薬効というのは人によっては副作用(害)となるものが多いのですから、どうしてもの時に中止して服用するというのが基本です。


漢方薬や鍼灸などにしても同様です。いわゆる西洋医術よりもなんとなく体によさそうな気がするのでしょうし、実際体にかかる負担は少ないのかも知れませんが、それとて合う合わないがあります。ですから、薬や鍼灸を用いるのはやむを得ないときにすることなのです。

漢方薬は、その人の体質や体調に合わせたものでなければ、かえってからだの調子を損ないます。

鍼灸は基本的に体内に滞ったものを逃がしてあげるような術なので、体調に合っていなければ、かえって元気を失うことになります。

 ついでに言えば、サプリメントと呼ばれるものを使用して、ちょっと健康になったつもりになるというのもまずいと思いますよ。そんなことより養生を心がける方が余程マシでしょう。宣伝に踊らされないことです

2012年10月27日土曜日

減と滞


 養生の妨げとまたげとなるものとして、減と滞の二つあげている。


 減とは元気を減らすこと。勢いや欲望にまかせ食べ過ぎたり、色欲におぼれたり、働きすぎたりすると元気を減らすこととなる。

 滞とは元気を滞らせること。体を動かさず怠惰な生活をし、睡眠をとりすぎたりすると元気が滞ってしまう。気の廻りが悪くなってしまうということ。

 減も滞も元気を損なうことになる。まあやりすぎずやらなさ過ぎずというところでしょう。心は穏やかに、しかし体は動かし休ませすぎない。

 それにしてもその正しさを納得できる言葉というのはどうして実行がむつかしいものが多いのでしょうか。中庸を行くバランスを求めているようにも見えますが、その加減はむつかしいですよね。偏ってしまうからこそ、人生は楽しかったりするのですが。

 まあ、過激と怠惰、この二つは注意して、元気な状態を保つほうが良いのは確かでしょう。

2012年10月26日金曜日

飲食色慾によりて病生ずるは、全くわが身より出る過也



 身から出た錆、という言葉があります。この言葉を自分に向けられる時というのは、大抵自分でもしまったと思っているので堪えます.

 ちょいと無茶をして体調をこわしたり、怪我をしたりすると、しまったと思いますよね。飲食や色欲がすぎて病気になってしまうのは、自分の責任ということですね。

 ただ、癌にかかった人にまで、身から出た錆なんていう言葉を向けるのは、少し酷だと思います。癌だと言われただけで参っている人に、今更言われても仕方のないことで追い討ちをかけることになりますからね。それにきっちり養生していたからといって癌にならないわけではないですから。

 なってしまえば仕方がないけど、やはり明らかに体を傷つけるタバコなんてやめたほうが良いと思いますよ。吸いたい、のみたいという欲は捨てましょう。タバコ吸わなきゃよかった…と言う癌患者さん、少なからずおられますから。

2012年10月25日木曜日

嗜慾



 嗜欲というのは嗜好の嗜に慾望の慾と書きますね。慾望の赴くままに節度を越えて、好むものをむさぼり欲しいままに行動すれば、体を傷めることになるでしょう。

養生の基本は、その嗜欲をコントロールするということに尽きるのかもしれません。我々凡人にはそれがむつかしい。わかっちゃいるけどやめられない、と言いながら日々を送ってしまいがちです。そしていよいよ体を壊してからしまったと思うわけです。

後悔先に立たずという名言を、やはり後になって納得するという始末。そうならないように、あと一杯、あと一口をこらえるようにしたいものです。節度という日本語を、思い出したいものですね。

2012年10月24日水曜日

心気を養ふ

 心を和やかにし、気を静めて、怒りや欲望を抑え、激しい感情をなるべく少なくすれば、元気を損なわなくなる。これが気を養うために最も大切なことである。

 だらだらと横になっていると、気が滞ってしまう。食べてすぐ寝るようなことをすると、消化管に負担をかけて、胃腸の調子が悪くなる。食後には少し歩いて、腰や腹を時々なでさすり、手足を動かし、体を動かして血気をめぐらし、食べたものの消化を促すのがよい。


 飲みすぎたり食べ過ぎたりした時に飲む薬や、飲む前の服用を勧めるという薬の宣伝がある。しかし基本的には胃腸薬を服用してまで飲食を過ごすのは大きな間違いであろう。欲に任せれば元気が無くなり短命となる。限度を定めて、過ごすのがよいのだ。

 養生の中でも大切なのは、病になっていないときにいかに慎み深い生活をするかである。病気になってから慌ててあれやこれやとするのは、養生の中でも最も程度の悪いものであり、普段の生活の中で心がけるのが、養生する上で大切なのである。

2012年10月23日火曜日

人の元気は、もと是天地の万物を生ずる気なり



 私たち日本人は「気」という言葉をよく使います。この地球上の、あるいは宇宙全体に存在するものを生み出す源を「気」という言葉で表しているのでしょう。この気がなければ私たちの体も、この世に生まれてこなかったと考えるのです。

 生まれた後は、食べ物や飲み物、衣服、住む場所その他いろいろな外からの助けで、元気が養われて、命を保つことができるのです。しかし、この元気を養う飲食などは、多く求め体に取り入れすぎると、つまり食べ過ぎたり飲みすぎたりすると、かえって元気を損なうこととなり、命を縮めてしまうのです。

 外に向かって快楽を求めすぎるのではなく、自分の内面を見つめ磨くことに楽しみを見出せるようになれば、おのずと元気になり、長生きができるのでしょうね。

2012年10月20日土曜日

人の命は我にあり、天にあらずと老子いへり



 自分ひとりで大きくなったとか、自分の力で生きているという風に勘違いしているような人が多くなっている。そんな人に「人の命は我にあり」などという言葉を見せたら、俺の命は俺のものというふうに納得してしまうのでしょうね。でもこの意味はそうではありません。

 自分の命は授かったもの、いただいたものという大前提はいささかも崩れてはいないのです。

 授かった命を、もし縮めるようなことがあるとすれば、それは自分の責任ですよということを言いたいのだと思われます。結局、長生きできる(天寿を全うできる)か否かは、自身の生活の在り様にかかっているんだということでしょうね。

 生活習慣病が問題となっている現代人を、貝原益軒が見れば、わざわざ命を縮めているとしか見えないことも多いのではないでしょうか。

2012年10月19日金曜日

凡(すべて)の人、生れ付たる天年はおほくは長し

 原子力発電所の耐用年数などが問題になっている昨今ですが、どんなものにも耐用年数がありますね。ただ、その使い方によっては耐用年数に至らなくても壊れてしまうことだってありますし、逆に随分と長持ちすることだってあります。人の場合だって、恐らく同じでしょう。

 まあ、命に直結するような先天的問題や弱い体質を持って生まれてきた人は、短命で終わることになりやすいのでしょうが、ほとんどの人はかなりの耐用年数を持って生を授かっているものらしいですよ。

「この子は、長生きはできないだろう。」と思っていた親を尻目に、高齢まで生きたという人は数多くいる。逆に、元気一杯に見えた人が、意外と早く亡くなったりする人もいる。要は使い方つまり養生の仕方によって、人生の長さは大きく変わるということです。

 子供の頃ひ弱な人は、それなりに無理をせず、体をいたわる習慣がついてくるので、その寿命を全うしやすくなる可能性があります。逆に体に自信を持っている人は、その自信ゆえに無理をしたり、無茶をしたりして健康を損なっていったり思わぬ事故にあったりもするかもしれません。

 せっかくこの世に生を受けたからには、ちょっとは心身をいたわり、欲の赴くままに行動したくなるのを少しは制御し、長生きをしましょう。充分この世を味わいましょう。

2012年10月18日木曜日

内慾をこらゆるを以って本とす

 野生の動物は、必要以上にえさを捕らないといいます。ところが人間の場合は、大脳新皮質の進化(退化?)に伴ない、知恵、知性、理性、とともに欲望が強くなってきたみたいで、体が必要とするもの以上の摂食行動が見られるようになっています。メタボリックシンドロームが問題となるということは、欲望のコントロールがうまくいっていない場合も多いのでしょう。

 飲みすぎなんて言うのもあります。私だって何度も二日酔いを経験してきました。情けないと思うけどどうしてもね。ただお酒を飲むのも体力がいるので、年とともに飲まなくなってきました。

 欲望の赴くままに過ごせば、体の抵抗力が落ち健康を損なうのは道理。抵抗力が落ちれば、ちょっとした病気から大病になっていったりもします。

 内欲をコントロールする必要がある点をいくつか上げてみると

 食べすぎ、飲みすぎを慎む
 色欲を慎む
 睡眠をとり過ぎない
 感情に流されず心の乱れを制御する
 
 う~ん、なかなか難しいところもあるようですが、時折こんなことも考えながら、少しだけ内なる欲望を制御する、ということは必要かもしれませんね。

2012年10月16日火曜日

先ずわが身をそこなふ物を去るべし



 体に悪い、これをやると我が身を損なう、と思っていながらそれをやっちゃう、なんて言うのが人間なのでしょうが、一応体を損なうとするものを考えておきましょう。
 それは、外邪と内欲。
 外邪というのは、身を損なう外的要因です。特に、四季の移り変わりと関連する、風・寒・暑・湿・乾などは外邪として、それから身を守る必要があるとされました。どの要因が過度に強くなっても、体の調子を壊してしまう原因となってしまうということですね。
 しかし体を壊す原因をそとにばかり向けてはいけません。内欲もきちっとコントロールする必要があります。欲と言うのはなかなか限度というものがなく、追い求めるとどこまでも執着してしまうというところがあります。満足させようとするより、足るを知る、ということが大切なことのようです。
 現代は健康ブームと言いながら、こういう基本的なところにきちっと目を向ける人は、少ないようですね。

2012年10月15日月曜日

人の身は父母を本とし天地を初とす

 体外受精、代理出産、出生前診断などが当たり前に行われており、男女の生み分けなども人為が加えられる現代において、子供は産むものであり「授かりもの」という発想は描きにくくなってきているように思います。また行き過ぎた自我の強調はミーイズムや自己万能感をはびこらすことになり、自身が父母の元に有り難くも生まれ、自然から命を頂いている、などということを思う人が少なくなっているとも思います。

 しかし私たちは間違いなく、大いなる自然の営みの中で、唯一無二のこの体を授かっているのです。せっかく授かったこの身を、大切にいたわり使い、また慎んでよく養って、天が与えてくれた命を長く健やかに保とうではありませんか。

 飲食欲や色欲などに振り回され、自ら肉体を痛めつけたり損なったりして病気になるようなことは避けたいものです。

 長命を保ち、生きる喜びや楽しみを十分味わいましょう。

 体の細胞は日々入れ替わっています。ならば日々の慎み、積み重ねが、長期にわたれば多大な影響をわが身に及ぼすことは明らかです。養生をして、天命を全うしたいものです。

2012年10月13日土曜日

節度

 食べ過ぎに○○とか、飲む前に△□とか宣伝されますし、実際にそう言うお薬を利用する人も少なくないでしょう。でもこれって養生の対極にある発想ですよね。もともと節度をもって飲食すれば、使う必要のない薬ですからね。

 人は飲食により外からエネルギーや体を作るものを取り入れて生を保っています。しかし暴飲暴食を繰り返せば、胃腸を傷め、肝臓や膵臓に障り、脳にも悪影響を及ぼすことになります。薬によって一時的に症状を緩和したところで、害は蓄積し、いずれ悔やんでも手遅れの状態となります。

 外からいろいろなものを取り込み、我がものにしようという欲望を肥大化させる現代。「節度」という言葉を、今一度噛み締め味わう必要がありそうです。薬を使う前にね。

2012年10月12日金曜日

憂い

 何かの病気にかかれば、症状はもちろん、どれくらいで楽になるか、治るかどうかなどなど、いろいろ心配してしまいます。その心の動きは仕方の無いことですが、いつまでも憂いていても病気が良い方向に向かわないのも事実です。

 少しでも体調を良くする方向に、今できることを実行し、養生に努めることのほうがきっと大切です。心配しすぎると心が暗く閉じてしまい、病をさらに加えることになっちゃいます。

 どんなことでも、いきなり事態を好転させるような方法が無いのと同様、一旦病気になれば次の瞬間良くなるなんて言う方法は無いでしょう。体を休め、心を安め、心身が回復していく時間を待つくらいの余裕は欲しいものです。

 と言いながら、頭が痛けりゃすぐに鎮痛剤を服用し、仕事を続けてしまう私ですが・・・ただ、うだうだ心配はしないようにしたいと思っています。

2012年10月11日木曜日

微酔

 お酒はちょい酔いくらいでやめましょう。

 わかっちゃいるけどなかなかね。特に若いうちは、二日酔いの度にもうやめようと思うのだが、また懲りずに飲み過ぎる。二次会、三次会は当たり前、なんていう時代私にもありました。しかし体のためには、縁もたけなわくらいのところで辞めるのが良いようですね。

 また、そこそこ酔うほどの酒量をまいちに続けていると、気がつかぬうちに肝臓が悲鳴をあげていることもあるようです。

 飲食は、程々でやめておく、というのが養生第一の基本ですね。

2012年10月10日水曜日

動く

 お年寄りの方の元気を奪おうと思えば、身の回りのことを全てしてあげて、自分では何もしないで済むようにするとよい、と言われる。つまり大事にして、本人が体を動かさなければ、逆に弱ってしまうということになる。

 私たちは、だらだらしているとますます体を動かすのが億劫になってしまい、さらに動かなくなってしまう。これなどは、まさに体を弱め、気力体力を奪っていく特効薬である。

 元気に生きていこう、少しでも長生きしようと思ったら、こまめに体を動かすことが大切なようだ。
心はゆったり平らかに、体は安逸にせずこまごまと動かす。これが元気いっぱいのコツである。

 テレビの前でだらだらしているあなた、CMタイムには周りのごみを捨てに行ったり、戸締りを確認しに行ったり、洗濯機を動かしに行ったりして、長~い時間じっとしていることの無いようにしてくださいね。

2012年10月9日火曜日

楽しむ

 楽しみというと、何か自分の外に求めようとする。しかし、外に求めれば、その楽しみを得ることもあれば、かなわぬこともある。求めようとして、気力や体力を奪われてしまうこともある。これでは、養生の道、つまり命長きみちから外れやすい方向へと進むことになる。

 楽しみは、外ではなく内に求める方が良いようだ。内と言っても、勝手に自分の心の内で妄想を描くことではない。妄想する心は結局外に向かっている。

 自然を味わい楽しむ。書物に触れ、心を養う。旅をし、いろいろなものに触れることにより、自分の中から湧き上がる命を育む。

 こういう心による楽しみを味わうことができれば、気力は充実し、長く生を保ちやすくなる。

 こんなこと若いうちから出来るわけがない。しかしある程度の年齢になっても、外に向かい享楽のみを求めるような生活をしていては、命を縮めるのみ。慎むべし!!

 なんてこと言いながらも、命を削っても身を沈めたい! なんて思うことは、どなたにもあるかもしれませんね。

2012年10月8日月曜日

畏れ

 先日テレビでマッターホルンへの登頂過程を見た。予断を許さない天候、そり立つ絶壁、左右がほとんど崖という状態の稜線、そんな危険な状況を少しでも安全確実に進んでいかなくてはならない。当然遭難、滑落その他の原因が死に結びつくという恐怖があるから、一歩一歩慎重に進む。あそこまでして登るのか、すごいねぇ、などと言いながら放送を見終えた。

 しかし、当たり前に生きている日常も、よくよく見回してみれば日々危険と隣り合わせである。一歩間違えば命に関わるようなことに囲まれているように思える。そこのところに気づけば、生きる姿勢も丁寧に、慎み深くなるのではないだろうか。

 やたらとスピードを求められる世の中で、ついついオーバースピードで日々を送ってしまいそうになる。でも気持ちを落ち着けて、ゆっくり、丁寧、確実に。結局それが危険を避けることになり、健康という意味では、養生に結びつくように思う。

 何事においても、畏れを知るということが大切のようだ。ただ勢いだけでずんずん進もうとするようなものは、蛮勇に過ぎないのだから。

2012年10月7日日曜日

誕生させて頂いたありがた~いこの心身

 当たり前と思っていることが、実は極めて有難いことであるということに気づくことは難しい。

 息をしている。このことは普段意識なんてしないから、当たり前と思っているが、呼吸機能が落ちて普段から酸素ボンベのお世話になるようになったりすると、びっくりするくらいありがたい事だと思い知らされる。

 食事をする。当たり前でしょう。でも腸の病気などで、食事制限が必要となる。アレルギーで、食べられる食材が限定される。はては、病気で食事自体ができなくなる。こんな状態になると、普段当たり前にやっている食事が、実はとてもありがたい事だとわかる。

 今、ここに自分がいる。こっれって揺るがしようのない事実でしょ。そう確かに事実かもしれないが、精子や卵子の数、両親が出会った奇跡、祖父母の代でその祖父母が大戦を生きながらえた事実…、どんどん考えていくと、今ここに自分がいる不思議が、ずどーんと心に響いてくるはず。

 反抗期になると、「産んでくれと頼んだ覚えはない。」などと偉そうなことを言ったりするが、頼まずともこの世に生まれ出ることが出来た奇跡を、心深く刻む必要がある。

 生まれ出た自分、その体、それぞれ個性があることだが、せっかく頂いたこの心身を、少しでも長く健やかない保ちたいもの。そのためには日々の養生が必要となる。

2012年10月4日木曜日

長生き

 「太く短く生きるんだ」という方を時に見かけます。元気いっぱいのときや、何かに反発しているときなどにこんな気持ちになること、若いときにはあるかもしれません。でも、年齢とともに世界の見え方が変わることを実感すれば、長生きすればもっと違う面が見えてくるのではないかと楽しみになります。

 人には体質といったものがあるかもしれませんが、幼少期にひ弱で長生きできないといわれた人が長寿を保つことは珍しくありません。それは、身を守り、養い、保ったからです。きちっと養生したからです。そんな養生の方便を探り、少しでも長生きして、人生というものを味わいつくしましょう。

 当養生軒では、少しでも味わえる品を提供したいと思っておりますが、何せ店主自身がお酒好きときておりますので、実際に役立ち、お気に入りいただけるものをお出しできるかは責任の限りではございません。まあ、覗いていってくださいな。