2014年10月27日月曜日

酒は天の美禄なり



 お酒をまったく飲めない人にとって、お酒は害であり、毒でしかない。しかし、呑める人にとったらありがたいものである。少し頂いているうちなら、陽気になり、気持ちは楽になり、食欲は増進し、いらぬ心配はしなくなる。素敵なご褒美である。

 しかし度を過ごせば、酒ほど人にとって害となるものもないかもしれない。過度の飲酒が引き起こしたと思われる病気や事故は少なくない。

 特に、「おれは、飲み始めたら食わぬ。」などといっている人は、命を縮めることになる。せっかくの美禄が却って仕打ちになるなんてことは、悲しいね。

2014年2月17日月曜日

消導の薬

 食事をたくさん食べたときなど、みずおちが張った感じになります。そのうち胃から小腸へ食べたものが徐々に送り出され、その張った感じはなくなっていきます。この様子を消導と呼ぶようですから、消導の薬といえば胃薬とか消化薬といったところなのでしょう。就寝前になってもまだ胃がすっきりしないようなときには、消導の薬を服用することを勧めています。 

 まあもともと、就寝前に胃が張っているような食事の仕方が問題なのかもしれません。しかし、寝ている間に胃の内容をもどして、窒息したり誤嚥したりすることのほうを警戒したようです。益軒さんの時代も、食道胃逆流は問題だったのかもしれません。

2014年2月6日木曜日

少くひて其味をしり、身に害なきがまされり

 肉を一切れ食べ、果実を一粒食べるだけで、味わうことができる。それらをたくさん食べれば、より味わえるというものではない。おいしいからと言ってもう欲しくなくなるほど食べてしまえば、逆に食べ物の味を落としたことになる。

  たらふく食べて、胃腸の調子を落とすより、少なめに食べて料理や食材のもつ味を知る、というほうが身体にもよいし、豊かで文化の香りすらする。 

 一口食べれば箸を置き、含んだものを味わいつくしたのち、箸をとる。優雅な所作だと思いますね。

2014年2月4日火曜日

一処に久しく安坐すべからず

 食事が済んでも、どっかと腰を下ろしたまま、だらだらと時を過ごすひとは、その習慣を改めたほうがいいかなぁ。食後は多少身体を動かしたり歩いたりしたほうが食事が滞らずに身体によいとのこと。 

 まあ、激しい運動などはいないほうが良いに決まっているが、器を洗い片付けたり、空気を吸いに外に出たり、近くの商店街を冷やかしに行ったりなんてことが良いのでしょう。ただ、外に出てそのままちょいと一杯がいっぱいになったりしたのでは逆効果でしょうが。

  食事は少なめにして、体をこまめに動かす、というのが一貫して述べられていることのようですね。

2014年2月3日月曜日

すける物は脾胃のこのむ所なれば補となる

好きな食べ物というのは、もともとからだが欲しているものと考えていいだろうと思います。当然体にも良いはず。ただ、人間の頭は欲張りにできているのか、好きだというのでついつい食べ過ぎてしまう。食べ過ぎると、胃腸に負担がかかり、体調を崩してしまうことだってある。 

 せっかく体に良いであろう物を食べ過ぎて体を壊すくらいなら、あまり好きでないものを少し食べるほうがましであろう。しかし、好きなものを控えめに戴く、というのが最も良いようだ。

  頭が生み出す欲望に流されることなく、体の声に耳を傾けよう。そうすれば、もうそれくらいでいいよ、というささやきが聞こえてくるはずだ。

2014年1月31日金曜日

食傷の病人は、一両日食せずしても害なし

 なんか食欲がないんだよね・・・なんて言いながらご飯を食べている人がいる。食欲のない状態が長く続くなら、検査を受ける必要もあるのでしょうが、多くの場合は胃腸が疲れているのだと思われます。休ませてあげましょう。

  朝食がもたれているなら、昼食はぬかし、それでもダメなら夕食もぬかす。ちょっとくらい食べなくたって、体に害を及ぼすとは思えない。長い生命の歴史の中で、人類が毎日食にありつけることのほうが珍しいことだったはず。体だってそういう風になっている。

  胃腸だってくたびれる。くたびれたときには休ませる。考えてみたら、当然だよね。

2014年1月30日木曜日

花は半開に見、酒は微酔にのむ

 興に乗って、空騒ぎや馬鹿騒ぎをすると、あとで疲れる。調子に乗りすぎずそこそこのところでやめておくほうが良い。ほろ酔い程度でやめておけば機嫌よく過ごせるところが、度を過ごしてつらい目にあった御仁は多いだろう。欲望の赴くままに過ごせば、しっぺ返しがやってくる。

  友人との会食でおいしいものを前にすると、食べ過ぎることが多いが、そのとき充分満足するほど食べてしまうと、後で体に障るものである。 

 貝原流の食に関する養生の要点を、かいつまんで読んでいるわけだが、「楽の極まれるは悲の基なり」というのは、飲食にとどまらず、人生全般に言えることなのだと思いますね。

2014年1月29日水曜日

人身は元気を本とす

 生きているからには、元気であるのが本来の姿。元気でいるためには、日々必要なものを食べ物から補給する必要がある。食は、元気の源である。ただ過ごすと逆に元気を損なうことになる。

  心身壮健で、食べ物を十二分に消化、吸収、利用できれば、きっと長生きができるでしょう。でも変なもの食べたり、偏食したり、食べ過ぎたりすりゃあ、命を縮めることになるねぇ。 

 補給することばかり考えず、補給しすぎの害もちょっと考えないとね。

2014年1月23日木曜日

よきほどのかぎりの外は、かたくつゝしみて其節にすぐすべからず

 好物が出てくると、ついつい食べ過ぎてしまうもの。カレーライスが大好きだった私は、幼いころについ食べ過ぎて、あとになって嘔吐したりしておりました。まさに、食いすぎです。

  腹ペコになったときなどは、かき込むように食事をしてしまいがちですが、これなども食べ過ぎになってしまうことが多いようです。 

 また、消化に時間がかかり、お腹に残った感じがなかなか取れないものは、夕食には適していません。味の濃い肉類、脂分の多いもの、イモ類、にんじんなどは滞りやすいようです。

2014年1月22日水曜日

食をひかへすごせば、やせおとろふ?

 お寺でずっと修行をされているお坊さんが、やせ衰えていくかというとそんなことはないですね。実に元気いっぱいのように思えます。逆に脂肪たっぷりの、生臭坊主のほうがどうも不健康に見えてしまいます。

  人は、食事を控えめにしようと思っても、普通は必要な量を食べるもの。ほとんどの人は、食べすぎということを考えれば、控えめにしようとするほうが、丁度いいのかもしれません。

 しっかり食べないと、元気が出ないよ。というふうにはよく言われますが、現代の日本においては、食べ過ぎの害の方が問題だろうと思います。

2014年1月21日火曜日

夜食する人は、暮て後、早く食すべし

 日が暮れてからも、活動する人が多い現代において、夜だから食事は控えるべきとはいいにくいですね。

    ただ眠る時間が近づけば、食事は控えるのが良いようです。食べたものが消化される前に、床に着くようなことを続ければ、体に負担がかかり、病を引き寄せることになります。

  腹が減って眠れない、なんてことを言う人もいますが、よほどでない限り就寝前の空腹が体に害をなす、なんてことはないと思われます。どうしてもの時は、少量を早めに、という風に心がけましょう。

2014年1月20日月曜日

飯を多くくらへば、脾胃をやぶり、元気をふさぐ。

 ご飯は炭水化物を多く含んでいますから、大切なエネルギー源。でも食べ過ぎれば消化機能を傷害してしまいます。ご飯の過食は、副食の食べすぎより害が大きいと考えられていたみたいです。副食の品数が多いときには、主食を控えめにしさらに副食も少しずつ戴くのがよいです。

  食後に甘いものを戴いたり、麺類を食べたりして、満腹の上にもさらに食べるようなことがあってはいけない。食によって身体を壊す結果になります。食後に何か食べようと思うなら、もともとの食事量を少しコントロールして減らしておくべきです。

  これもまた、分かっちゃいるけど・・・という類のご指摘ですが、確かにそうなんでしょうね。飲み会などがあれば、最後の締めはラーメン、なんて言う人はとんでもないということになりますね。

2014年1月18日土曜日

身を養ふ物を以、かへつて身をそこなふべからず

 身体を健やかに保つために、私たちは食事を摂ります。その食事が逆に健康を損なうようなことがないように、注意する必要があります。食事の内容を吟味して、害があると思われるようなものはいくらおいしくても、口にしないようにしたほうがよいですね。  

基本的には、身体を温めてくれるようなものの方がよいようです。身体を冷やしてしまい下痢をしてしまうもの、気分がすぐれなくなるようなもの、お腹が張るように感じるもの、辛過ぎるものなどは、身体の調子を落としてしまうかもしれません。

  まあ、空腹になった時に自然と食べたくなるもの、というのは身体が欲しているものでしょうから、素直にそれに従えばよいと私は思います。しかし、食べるものが自分に合っているかどうか、というのは常に注意が必要でしょうね。

2014年1月17日金曜日

五味偏勝とは一味を多く食過すを云

 同じ味のものを食べていると飽きてしまいます。私たちの味覚は、恐らくいろいろな味のものを食べるように作られているのでしょう。しかし、味覚は習慣も影響するようで、塩気の多いものを好む人は薄味では満足できなかったりします。甘いものも同様です。 

 甘いもの、辛いもの、塩気の多いもの、酸味の強いもの、苦いもの、それぞれが身体にとって必要な栄養素を含んでいると思われます。ですから、どれか一つを極端に多く摂るのではなく、偏在しないようバランスよく戴くのが良いようです。 

 加えて、水分も取りすぎると消化機能を落としてしまうので、注意が必要です。

2014年1月15日水曜日

珍美の食に対すとも、八九分にてやむべし

 グルメという言葉を当たり前に使う世の中ですが、日本語の食通という言葉が示すとおり、食に深く通じている人に対して初めて使ってよい言葉なのだと思います。テレビなどでは、グルメレポートなんていう言葉も出てきますが、単にレポーターがどこかに行って、人気のある食べ物や珍味と言われるものを紹介しているだけ。食を道楽として紹介しているだけですね。私も当然飲食は好きですが、道楽の域にも達しておりません。

  有名店に出向いて、「あぁ、食った食った・・・」なんていっている人は、自身が食通でないことを吹聴している上に、自分の欲望を抑えられない人間であることを露呈しているのみです。でも、言うのは簡単ですが、うまいものを前にして程ほどほどで抑えることは難しいですね。

  だからこそ益軒どんは、過食の禍を繰り返し述べるんですね。目の前にうまいものがあるからと言って、たらふく食っちゃうと身体に堪えるよ。腹八分で抑えなさいよ。

2014年1月14日火曜日

飲食は飢渇をやめんためなれば

  動物である人間が摂食活動を行なうのは、身体の働きを維持し機能を保ち種を存続させるため。そのための必要量を満たせば、ほんの少したくわえがあればよいということになる。それ以上溜め込もうと、やたらと食べてしまうのは、慾を抑えることができていないということになる。

  まあ、現代の先進国のように、いつでも充分食事を確保できる、などという状況は長い生命の歴史の中でも極めて稀な出来事だろう。その出来事に人間の脳が適応できていないだけかもしれない。

  食べ過ぎたといって薬を飲む人、飲食のために前もって薬を飲む人がいるけれど、過食と薬の影響で元気を損なう可能性が高い。

  おいしくて嬉しくなるようなものを食べ始めると、ついつい度が過ぎてしまう。これはうまい!と思ったら、ちょいと戒めの心を持って、欲望を少しコントロールしてあげよう。病に倒れてから後悔しないようにね。

2014年1月13日月曜日

凡(すべて)の食、淡薄なる物を好むべし。

 淡白な食事を摂るのがよい。油っぽいものなどは多く食べてはいけない。冷たいもの、堅すぎるものなどもやめたほうが良い。肉を食べるときは1品に限り、多く食べてはいけない。生肉を続けて食べると、消化不良になる。汁物に肉があるなら、おかずには肉を使わないほうが良い。

 食の養生の大切なところは、昔も今も変わらないようですね。脂分というのは、美味しく感じるので、ついつい度が過ぎてしまいますね。冷たいものを食べ始めると、口への刺激などが心地よく、ついつい度が過ぎてしまうこともありますね。

 体につく脂肪は、エネルギーの取り込みと消費の収支決算。肥えていくときは、間違いなく摂取過剰。食の喜びを捨て去るなんてできませんし、必要もないと思いますが、量は控えめにしたほうが良いようです。

2014年1月12日日曜日

飯はよく熱して、中心まで和らかなるべし。



 ご飯を炊くときは、しんが残っているような状態でなく、中心までふっくらしてないと美味しくないし、体にもよくないよ。そして温かいうちに召し上がれ。鍋物なども、温かくして食べるのが良い。

お酒は、夏も少し暖かくして嗜んだ方が良い。冷やして飲むと、胃腸によくない。かと言って冬にあまり熱くして飲むのもよくない。気が頭に登ってしまうし、元気を損なう。

江戸時代に、煮炊きをするのは、今より手間のかかる作業だったでしょうから、こういうことまで注意するのでしょう。それにしても冷酒大好き、熱燗も大好きの私としては、耳の痛い忠告。まあ、飲みすぎ自体をまず注意したほうが良いかもしれませんがね。

2014年1月10日金曜日

聖人の飲食の法

 論語の郷党篇の中には、飲食において留意するべきことが記されているとのことだ。益軒はそのやり方こそ、養生の要と考えていたようだ。養生訓の中では、飲食に関して比較的多くを割いていることからも、そのことが伺える。

 飲食については、かなり細かく、具体的に記載されている。それを現代の食事に置き換えにくいところや、勧める飲食法が実際に良いものかどうか判然としない部分もあるかもしれない。まあよくわからないところは飛ばしつつ、その中身を見て行きたいと思う。

 基本は、暴飲暴食を慎む、温度は熱すぎず冷たすぎず、調理法に気を配る、新鮮なものを食す、薄味、などというところだろうか。

2014年1月9日木曜日

禍は口よりいで、病は口より入

 自身の命を養っていくためには、毎日飲食することになります。口が寂しくなったり、空腹感が出てきたりすると、何かを口にしたくなります。必要量だけを飲食すればよいのですが、ついついたくさん口に入れてしまいます。それが続くと、病を得てしまいやすくなるのです。
  口は禍の元、とはよく言われます。ついつい要らないことを言葉として出してしまうと、いろいろと軋轢を生んでしまうことは、誰しも経験のあること。口から出すほうもですが、口から入れるほうも必要以上に摂ってしまうとよろしくないようです。 
  禍というのは口から出て行き、病というのは口より入ってくる 
  うまいことを言うものですね。まあ、入るほうは、量の問題だけではなく、種類や清潔度、あるいは空気に漂う微生物まで含めての話になるとは思います。 
  お互い、口には慎みを。

2014年1月8日水曜日

元気は生命の本也。飲食は生命の養也。

 科学は生命に関する様々な事実を解明してきました。しかし、人が生命と呼べるものを人工的に生み出すことはできておりません。私たちの知っている様々な物質を寄せ集めただけでは、生命は生まれないのです。集まった物質を統合し機能させる何かが必要なのでしょう。ひょっとしたら、それは日本人が、「気」呼ぶなにかなのではないでしょうか。
  元気は生命の根源であり、その気を養うのは飲食です。生まれながらにもっている気(先天の気)というのもありますが、命を健やかに保っていくには、飲食より養われる気(後天の気)が大切です。 
 大切だからこそ、私たちは飲食が大好きなのでしょうが、ついつい過ぎてしまいがちですね。飲食に対する大きな慾をコントロールするのが養生の要なのでしょうが、とても難しいものですね。

明けましておめでとうございます

 随分ご無沙汰してしまいました。私の日常から、この養生軒のことは完全に忘れ去られておりました。
 このたびの年末年始が長期休暇だったことを良いことに、夜になればちびちびとアルコールを飲み続けてしまいました。翌日に残るほど飲んだわけでは無いのですが、休みが明け仕事に戻っても、頭も体もキレが戻りません。
 飲食を過ごしてしまうという、養生とは真っ向勝負の日々でした。反省しきりのところで、養生訓の文字を見かけました。
 そういえば、というので養生軒を思い出した次第。さてさて、復帰できますでしょうか。酒でも飲みながら…になってしまいそうなのが、気になります。
 皆様がしっかり養生され、良き一年を積み重ねられることを、お祈り申し上げます。